赤字受注はなぜ起こる?「儲かるように見積もりを作っている筈」なのに・・・
製品設計時のコスト検討の「正しい」ステップ
「製品原価の80%は、設計段階で決まる」
というように設計部門では、製品に目標原価が設定されています。
そして、設計チームは、この目標原価を達成するために性能や品質を確保しながら、最適なコストで作れるように図面や仕様書を作成するのです。
この作成した図面・仕様書などは、見積もりをして目標原価が達成できているかの確認します。
この見積もりの結果、目標原価を達成できたならば、つぎに生産の準備に移行します。
生産の準備段階では、まず図面について、生産の効率を上げるために変更が必要かを確認します。
これが、「生産設計」です。
ただ、生産設計は、設計標準によって決められている部分や生産部門からの設計変更の提案に依存して、あまり検討することなく、生産に移行している会社の方が多いでしょう。
そしてもう一つ、製品の作り方をまとめることになります。製品を生産する工程とその順序をまとめます。
さらに、それら工程の作業内容や操作手順などを設定することになります。これが工程設計です。
ただ、この工程設計は、企業によってはあまり検討することなく、図面や仕様書が生産部門に移され、類似品の過去の工程情報をもとに生産活動へと進めている会社もあります。
ある会社で起きた話なのですが、新製品を立ち上げるにあたって図面をもとにバイヤーが、取引先(受注側)に見積り依頼をしました。
バイヤーは、過去の類似品から今回の部品も、アルミダイカスト品で製作するつもりいました。
これに対して取引先からは、製品単価と一台あたりの金型費用の合計金額を考慮して、板材から削り出し方が安価になると別の提案をしました。
これは、設計段階で目標原価を達成したときの製造工程が変わり、コストが変化することになります。
部品や製品の作り方への検討(工程設計)が不十分なため、目標原価の達成への信頼性を失うことになります。工程設計するための能力不足でした。
工程設計の検討項目について、組立製品をもとに説明していきますと、まず、部品表があります。
部品表は、製品一単位あたり必要になる部品のリストとその各々の部品の必要数量をまとめたものです。
工程設計では、設計から発行された部品表(設計部品表あるいはEーBOM)をもとに作り方を対応した製造工程の手順に沿った部品表(製造部品表あるいはMーBOM)を作成します。
部品及びサブAssy品の中には、他の製品と共通で用いられるものがあるものです。それらの部品やサブAssy品が、どのレベルで必要になるのかを明確にしておくことです。
製造部品表(MーBOM)が、不適切だと欲しいタイミングで部品を入手できず、生産に遅れが生じたり、過剰な在庫を持つことになって、スペースや資金を圧迫することになりかねません。
つぎに部品の製作について考えます。
部品製作は、個々の部品の図面と生産数量(生産ロット数、総ロット数)などからどのような工程を経て、その部品をかたち作っていくかを考えることです。
たとえば、シャフトという部品があって、旋盤加工⇒円筒研削加工を想定しているとします。
旋盤加工には、単能盤や汎用旋盤、CNC旋盤、自旋盤、複合旋盤など様々な種類の設備機械があり、各々の設備機械には特徴があります。そして、設備機械ごとにコストが変化します。
シャフトでは、小ロット(10〜20個程度)であれば複合旋盤、中ロット(200〜300個程度)であればCNC旋盤⇒マシニングセンタ、2000〜3000個程度であれば複合自動旋盤が安価に製作できる。
このように、「どの設備機械」を採用すれば最適なコストでシャフトを製作できるのかということです。
部品の製作では、生産ロット数や形状、寸法、公差などによって、最適なコストで作れる設備機械をしっかりと検討することが重要です。
部品について、もう少し詳しく説明しますと、各々の設備機械を使ったとき加工費の比較になります。
加工費は、単位時間あたりの単価(時間単価)と所要時間(加工時間)をもとに最適なコストで作れる設備機械を選ぶことなのです。
とくに所要時間(加工時間)では、設備機械の操作をイメージして、必要になる治工具や金型などを整理し準備することが求められます。
ただ、企業によっては、設計段階で金型や専用治工具などを検討から外しています。
その理由は、徹底した部品の共通化を図ることによって、その負担額を小さくしているからです。
それだけ共通化が可能な企業なら可能な対処方法です。
近年は、前述の例にあるように工程設計能力について、設備機械のNC化・MC化から性能の向上や新規オプション機能の追加など技術の進展や製造現場を見る機会の減少からの知識不足によって、この課題が見えます。
さらに組立作業では、作業者中心から省力化や自働化など生産の主体が設備機械に替わってきています。
それは、設備機械に投資する費用の割合が大きくなることから、導入する設備機械への投資(費用)をしっかりと回収できるように考える必要があります。
近年は、ロボットが注目されていますが、作業者と設備機械(ロボット導入)の役割と範囲、組合せを含めた回収の検討をするためにIEを活用することが求められます。
また、もう一つの課題として製品ライフサイクルが、顧客ニーズの多様化やIoTを含めた技術の進展などによって短縮してきていることです。
このため、投資した設備機械の費用は、その製品の製作期間内に回収できるように考えるか、複数の製品に対応できるように汎用性を持たせて回収することになります。
これが、組立作業での設備機械の費用回収のポイントになってきます。
これまで述べましたように工程設計は、製品原価について、Plan(計画)-Do(実施)-Check(評価)-Action(改善)の管理サイクルの計画にあたります。
そして、目標原価の達成は、目標とする利益を確保することになります。設計部門からの目標原価を受けて、その実現のために重要な役割を持っています。
このため、アバウトな計画は、その成果の達成を難しくするものです。
工程設計は、製品の技術的な面(固有技術)と最適なコスト(コスト管理)の知識やノウハウを整備し、しっかりと工程設計に反映するしくみを作ることが大切です。
この方法については、別に論じたいと思います。
コストテーブルを活用した原価の見積、原価管理、MRPUをベースとした生産管理システムによるコストダウン・コンサルティングを中心に活動しています。
機械加工品の見積もりソフト
「コスト・シミュレーター」
「切削・研削コストテーブル」
「簡単見積切削品」
板金加工品の見積もりソフト
「コスト算定システム」
「簡単見積板金品」
これまで、加工品見積ソフト5種類ともにExcel32bit版にのみ対応していましたが、今回Excel64bit版にも対応することになりました。
これによって、Office2013以降のプリインストール版に、Excel64bit版が搭載されている場合でも、すぐに見積ソフトを運用することができるようになりました。
また、Excel32bit版とExcel64bit版が混在している環境でも、区別することなく、同じ操作で見積コストを算出することができます。
操作方法や機能などの詳細は、弊社HPの見積ソフトおよびデモ動画のページを参照ください。
なお、現在デモ版の配布は行っておりません