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有事のルール−まとめ/その13「迫りくる法改正の荒波−9」

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【経営】有事のルール−まとめ/その14 
「迫りくる法改正の荒波−9」 規範としての法さえ簡単にリセットされる時代

●多くの方にとっては一体何のコト?−かと思われるであろう「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が、この10月29日、第187回国会(参議院)で、賛成153/反対77で可決成立しました。

 

これは、労働契約法第18条=同じ使用者との間で通算契約期間5年超となるパート等の非正規有期労働者から、無期契約への転換申し込みが為された場合、使用者は拒否権を発動できない、という規定。不安定雇用を是正する主旨に基づき平成25年4月1日施行=に、特別措置法として−1)一定の期間内に完了する予定の業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する人については無期転換申し込み権の原則-5年ルール-を外し、最長10年までとする2)定年後に引き続いて雇用される高齢者(つまり、定年退職後継続雇用契約下にある、いわゆる嘱託社員)に限っては例外とし、事実上、無期転換の仕組みから解放する−という特例を設けたものです。

 

●法施行日から数え、未だ適用対象第一号(法令上は、平成30年4月1日が最速日)すら出現しない間に、早くも法改正というのは、労契法第18条の立法趣旨を踏みにじり、これを骨抜きにしようと云う意図が明らかだとする批判や、”八ツ場ダム”並の時計の針の逆回転であり、やり方が強引過ぎるのではないか、という懸念の声も挙がっていますが、これに対し改正推進派は、「この措置により、高い能力の活用と維持向上を図ることができる」というタテマエで押し切った様です。
客観的に見て、定年退職後の嘱託社員が、5年後には定年のない無期契約者となって再登場する−と云うのは、さすがに軌道修正もあり得る話かと思いますが、問題は1)のケースです。

 

●と申しますのも実は、この特措法成立にはいわば”露払い”の役回りとなった「研究開発力強化法改正」という、第一走者が既に先発していたからです。昨年12月に公布されたこの法は、「大学の教員等の任期に関する法律」とセットで改定されたもので、一見すると一般市民には無関係な、別世界のテーマのように思えますが、これらも当然ながら、労契法第18条に直結しています。
表向きの改定理由には、5年ルールが、5年を超える研究プロジェクト等に障害となる上、5年までの期間を区切った雇止めが多発しかねないこと等が挙げられており、結論から云えば、大学、研究機関等で教育・研究に携わる期間契約の研究者や教員、非常勤講師等が無期転換権を行使できるのは”10年超”という事になりました。既にこの時点で、この度の特措法へのレールが敷かれていることが良く判ります。

 

●確かに、場合によっては世紀を超えるレンジでも目的地に達し得ない教育・研究という分野に、実質的に5年と云う時限的縛りが掛かることとなり、人為的にその継続を遮断させる事態を惹き起こしかねない仕組みというのは、少し無理がありそうに思えます。
が、その一方、たとえ5年が10年になったとしても、それで研究成果が担保される訳でもなく、また有期契約が引き伸ばされるということは、研究者や教員等にとっては、不安定な状態が長期化するのみならず、10年を目前にしての雇い止めという更なる不安要因を抱え込む事になる=キャリアチェンジを考えた場合、この期間は10年の徒過或いは空白に転ずる可能性すらあるリスクの”肥大化”に繋がる=のではないか、とする議論があるのも又事実です。

 

●この改定は、”いつまで経っても非常勤”や”漂流博士(博士課程終了後、正規職につけずワーキングプア化するポストドクター)”等の社会問題の解決を更に難しいものにしたというに止まらず、過半数政権与党は、規範としての法さえ簡単にリセットできる、という紛れも無い現実を示しているように思えてなりません。

 

「法」とは一体何なのか?改めて考えさせられてしまう一件です。

 

−以下、次号−

 

有事のルール−まとめ/その13「迫り来る法改正の荒波−8」

 

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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