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「有事のルール ― まとめ/その7「迫り来る法改正の荒波」

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「有事のルール ― まとめ/その7
「迫りくる法改正の荒波−2」

韓国の大型客船が急旋回の後沈没し、死傷者数十名、3百名近くの修学旅行客等が船内に閉じ込められ、安否不明なまま既に6日を経過(記事作成日現在)、捜索も難航している−というショッキングなニュースが報じられています。生存者が、少しでも多く発見されるのを祈るばかりですが、続報を見る限り、楽観できそうにありません。原因は未だ不明ながら、事故に遭った当事者家族の憤りは凄まじく、その矛先は運営船会社を通り越し、行政府の姿勢、遂には国家体制の未成熟さにまで及び始めているようです。

 

●この不幸な事故を引き合いに出す心算はありませんが、「国家百年の大計」にも準えられる、民法(債権法)という大型空母の改正作業=舵を大きく切る事となる方向転換作業=にも、同じような危うさが潜んでいるように思われてなりません。
審議委員による議論は既に大詰めを迎え、最終案策定も秒読み段階にあるとされていますが、本当に議論が尽くされているのか、情報資料を見ても判然としないのです。

 

●一般に、大型船が舵を切る場合、それが急速であればあるほど軋み音も大きく、船体のバランスも偏って来るのは当然です。
今回の動きは、日本に、米国並みの訴訟社会を導く為の地ならしではないか、という声まで聞こえてくる程の私法の急転回。
社会秩序を維持し、市民生活に幸福をもたらすためのルールが法ならば、その社会を構成する9割の中小事業者が、今後大いに悩まされるであろう法改正、一段と紛争が増え、その収拾に莫大な時間と費用を要するであろう法改正(消滅時効見直しの影響を受ける労基法115条等)とは、一体何なのでしょうか
確かに、個別法や争い事の一々まで考慮していては埒が明かない、とは云え現実から賭け離れた原則論は、結果として悪法を生み落としかねません。

 

●角度を変えて、明文化を視野に置く課題についても見てみます。例えば、契約の締結後に、契約の前提となっていた事情に変更が生じた場合=締結時に、当事者においては予見不能且つ当事者の責任とはいえない事由により発生したもので、契約目的達成を阻み又は当初の契約内容をそのまま維持すると、当事者間の衡平を著しく害する事となる場合=は、当事者は、「契約の解除、契約の解除又は契約の改定の請求をすることができる」というもので、「事情変更の法理」と呼ばれています。
一例として、これを労働契約に置き換えてみると、東日本大震災により工場が大きな被害を受け、当面再開の目処が立たない状態となった為、内定者全員について契約を取り消す−といった事案になります。

 

●但し、今回の改正では、どうやら「明文化は見送り」となる公算が大きいようです。常識的には「巨大地震や集中豪雨など激甚災害が発生するこの国では、法律に規定として明文化する必要性が高く、予測困難な事態に対するリスクヘッジであればこそ、当事者だけの合意に委ねてしまうのは非現実的な話であり、明文化していないが故に実務で乱用されるケースが多いのではないか−だから規定化が正解」とも思われるのですが、
@契約の拘束力を否定する極めて例外的な法理であり、最高裁でも肯定されたケースは一例も無い
A想定されている明文規定では、却って適用の幅が広がるかのような誤解を与え兼ねず、混乱を招く
B実務的には個別の契約書の中に、このような事態に対する免責規定を盛り込んであるのが一般的であり、法律として条文化すると、実務上支障をきたす恐れがある、
等々の理由で反対論が優勢となっています。

 

●実際、生活の隅々まで網羅する条文など設けようがなく、条文に頼りすぎて文言解釈に血道を上げるのも馬鹿げた話ですが、問題は、このような重要事項の決定が市民不参加のまま、どんどん進められている事にある様に思うのですが、如何なものでしょうか。
<以下、次号>

 

 

 

有事のルール−まとめ/7「迫り来る法改正の荒波2」

 

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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