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「有事のルール ― まとめ/その3」

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「有事のルール ― まとめ/その3」

手本になるかどうかは判りませんが、常日頃の判断や対応の積み重ねに瑕疵がなければ、たとえトラブルが生じたとしても、物事はそうおかしな結論にはならない−ということを示す一例として、「三菱電機(うつ病)事件」を題材に取り上げてみました。

 

今後、控訴がなされた場合の顛末までは予想の外ですが、少なくとも本判決は、至極妥当なものだと思われます。

 

●事業規模の大小が、そのまま結果の良し悪しに繋がる場合も少なくない経済環境下で、ルーチンワークに追われる中小規模事業者でも、つい聞き逃したり見落としたりしがちな社員からのシグナルを漏らさず受信し、時をおかずにリアクションに繋げようとする柔軟な姿勢を常に持ってさえいれば、大方の禍根は、その時点で自然に取り払われてしまう−ということを、このケースは教えてくれているのではないかと思います。

 

●前々回取り上げた「東芝事件」、「ヒューレットパッカード事件」は、何れもウツ若しくは強度の脅迫観念を背景とした、精神疾患絡みの訴訟という点で共通項が見えます。過度な競争社会が、人も組織も疲弊させているという現実が、露になって来ているのです。そして、この傾向は今後益々強まり、膨大な手間と時間、巨額の費用が徒費される=一個人、一私企業に止まらず、地域や社会全体にまで負担が及ぶ=事が懸念されています。誰が見ても、問題が顕在化してしまってから、ゴングが鳴るまで殴り合いを続けるこのような「事後決着型社会」の弊害は、明らかであるにも拘わらず−。

 

●たとえ時計の針は元に戻せなくとも、それでも、かつての「事前調整型社会」の姿をなぞらえる事位はできるのではないか−そのような観点から、実例(三菱電機「ウツ」事件 平成25年6月28日 京都地裁判決)を参考に、「適正な手順」が担保されていれば、トラブルは防げないまでも、無駄な労力を省き無益な争いを続けずに済む、という事を検証してみたいと思います。

 

●本件は、ウツ休職後に退職(2年間の傷病休職期間満了後、ルールに基づき解雇)となった元従業員が、個人用プリンタの開発新規プロジェクトに関わった際、月100Hに達する程の法定時間外労働(過重労働)があり、これが当該疾病発症の原因=つまり業務災害=である等として、会社を相手取り、地位確認と未払い賃金及び疾病罹患の原因と主張する安全配慮義務違反、による損害賠償(慰謝料)を求めたものです。

 

●これに対し、裁判所が認めた事実関係は、次の通りでした。
原告は、このプロジェクト開始の数年前から、不安発作等の症状を訴えて通院、「パニック障害」「うつ病」の所見を得ていた(会社はこの間、専門医の診断書を提出させる等、しかるべく対処しており手続き上の瑕疵を発生させていない)事から、「ウツ発症」は、本人の主張する「プロジェクト従事」が原因ではなく、それ以前からあったものが完治しないまま継続していた、と考えるのが相当であり、よってこれを「業務上の疾病=労災」とは認められず(業務起因性があるとはいえない)又、会社は、入室時刻より退室時刻までの総在席時間から休憩時間を差し引いて得た値と所定就業時間との差が80時間を超えた場合は、その都度産業医の面談を受けるよう指導を行ない、休暇も適宜与えた上、繁忙期には原告の業務負担を軽減すべく派遣社員を補充する等、適切な対策を施している点等から見て、会社が原告の健康に対する配慮を欠いていた(安全配慮配慮義務に違反した)とまではいえない。

 

●本事案から得られる教訓は、次の二つに要約できるのではないかと考えます。

 

@従業員から何らかの体調不良のシグナルが発信されたときは放置せず、的確に受信し適時に対策を講じるシステムがきちんと機能している
−対象者及び関係者から事情を聴取し、医師等専門家の所見を提出させ、就労可否の判断根拠とすると共に、因果関係を明らかにする証拠としてそれを残し、保管する能力がある−か否か。

 

A対象者の業務負荷を軽減する措置として、有給休暇や特別休暇付与などの柔軟な運用を可能とする組織運営(これこそ中小事業者向き)や、産業医がいない場合でも長時間労働を確認したときは、地域保健センターの医師と面談の上、指導が受けられる提携関係(事前申込みで無料相談可)が築けているか否か。

 

●社内規約に準拠した対応が原則とはいえ、杓子定規な解釈と運用が常に好結果を約束する訳ではありません。
情理を解さず節理も弁えない相手はもとより論外、とは申せ、精神疾患の判別は未だグレーゾーンの域にあり、雇用契約継続可否にも大きく影響するだけに、その時々の判断・対応の適否が結果を左右する、という事を決して忘れてはならないと思います。
−以下、次号−

 

 

 

「有事のルール ― まとめ/その3」

 

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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