第20講 動の整頓

動の整頓

●静の整頓、動の整頓
 静の整頓は、「すぐに取り出せる(戻せる)ようにする」ことである。もちろん対象は「モノ」である。それに対して動の整頓は「すぐにコトが始められる(終わらせる)ことができるようにする」ことである。動の整頓の対象は「コト(仕事)」である。
●動の5S の始め方
 動の5S も、静の5S と同様に、整理⇒清掃⇒整頓の順番で進めるのが望ましい。動の整理をする前に動の整頓をしてはいけない。不要なことをすぐに実施できるようにすること自体意味がないからだ。また動の清掃をせずに動の整頓をすると、ムダやムリを黙認していることになり、整頓の価値が失われてしまう。

 

●動の整頓の対象は一連の仕事
 必要な仕事であり、ムリとムダがすでに取り除かれていても、すぐにその仕事に取り掛かれるわけではない。またすぐに終わらせることができるという保証もない。動の清掃は、1つの動作や工程(すなわち点)に対して実施することが多いのだが、動の整頓は、一連の仕事(すなわち線)を対象にしているからである。動の整頓も静の整頓と同様に整理、清掃と比べると少し難しい。サイクルタイム(正味作業時間)およびリードタイム(一連の仕事の開始から終了までの時間)の双方の時間を短縮することが求められるからである。

 

なぜ動の整頓が重要なのか?

●せっかく動の整理をし、さらには動の清掃をしても1つの工程だけが早くなり、かえって工程間に仕掛りや手待ちができてしまうことがある。ネック工程(最も時間がかかっている工程)の清掃をすればもちろんそれなりに効果はあるが、それでも大局的に眺めるとロスが出ることがある。動の整頓は、点ではなく線として全体を見ることから始まる。トータルで一番早く、あるいは一番簡単に仕事がで
きることを考えるという視点が、動の整頓だからある。
●リードタイムの短縮や段取り替えの短縮は、動の整頓の最も得意とするところだ。この2つを実施できないと、お客様の納期対応や小ロット生産あるいは変種変量生産に対応できなくなる。作業の効率的な組合せや設備ロス(チョコ停、立ち上げロスなど)の排除は、動の整頓の重要な手段になる。

 

現状は?

●動の整理はよく理解できた。最近は不要な会議や資料作りもなくなり、少しずつゆとりもできてきた。そのゆとりで現在、動の清掃を皆で実施しているところだ。ムリやムダも少しずつ見えてきて、少しずつだが作業時間も短縮されてきた。この分でいけば、まったく届かないと最初から諦めていた標準時間の達成もできるかもしれない。しかし動の整頓は、難しくてまったくわからないし、やる気も起きない。動の清掃だってまだまだやることがいっぱいある。動の整頓は多分ずっと手を付けられないだろう。
●しかし最近の短納期の注文には大変困っている。段替え時間が長いのでロットは大きいままだ。工程間のつなぎも悪く、リードタイムも短縮されていない。在庫で対応するしかないが、多品種のためいくら在庫を持っても追いつかないのが実情である。

 

どうすればうまく動の整頓ができるのか?

●動の整理、さらには清掃がある程度すんだら、動の整頓も実施するとよい。そうすればライン全体としての効果が出るし、動の整理や清掃もさらに進むからだ。特に、動の清掃は終わりがないので、動の清掃が終わってから動の整頓に進むという考えでは、結局いつになっても動の整頓に手が付けられないことになる。
●まず1つのライン(動の整理と清掃は実施済み)に着目して、動の整頓を進めるといい。どうすれば、第一工程に投入してから最終工程で完成するまで最短時間でできるか皆で考えよう。また、複数の機種がこのラインに流れる場合の品種切り替えを、最も短くできるやり方も現場を見ながら皆で考えてみよう。これが動の整頓の第一歩になる。考えるだけでなく、速やかに試してみることも大切だ。やれば必ず前進する。動の整頓を皆で楽しく進めよう。

 

筆 者:越前行夫 えちぜん ゆきお
    えちぜん改善実践舎 代表
    きむら5S 実践舎 コンサルタント
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