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「有事のルール・本編「医師との連携・情報交換に立ちふさがる課題−2」

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有事のルール・本編

「医師との連携・情報交換に立ちふさがる課題2」

2010年度の疾病費用総額3兆円強(直接費用(1)2100億、間接費用(2)2兆9000億弱)の内、メンタルヘルス関係は4分の1を占めると推計されています。

 

(1)診察、検査、治療、処方、薬剤等診療機関で直接掛かる費用
(2)失われた所得、休・失業給付金等労働損失により生じた費用

 

こうした費用は単なるコストでは無く、医療関係事業や社会復帰支援事業等、一部では確かに需要増・雇用増に寄与する面があるのも事実ですが、生産活動に従事できない者の増加は、著しい経済活力の低下と負担の歪化を招き、それが個別企業から地域、産業、国家規模へと次第に拡大しながら波及する負のスパイラル-となるのは必定です。

 

雇用者の6人に1人がうつ症状を呈し、日本の今日の状況と酷似しているとされる英国でも、延べ1億7千500万日/年にも達する労働損失日数(25年1月27日付日経朝刊15面)や総額260億ドルにも及ぶコスト負担増(22年度資料)が指摘される等、休職やその反復=プレゼンティーイズム=に伴うソーシャルコストの増大は、最早放置できない段階に至っている模様です。

 

シンポジウム主催者であるリワーク推進協議会の活動=「社会復帰プログラム」の展開=は、従って、この様な事態に対する、状況改善の為の様々な試行錯誤の一つと考えてよいかと思いますが、有意義で大変評価すべきこうした活動が実施されているにも拘わらず、実に残念な事に、全体の状況は改善されていない−というより、寧ろ悪化しているように見受けられるのは、一体何故なのでしょうか?

 

私見ではありますが、その主な原因は、以下の5項目に集約出来るように思われます。

 

1.愁訴に基づくウツ診断基準の曖昧さ(解説1)=自覚症状ではなく身体的反応数値−例えば、人体から発せられる脳波等の信号−を識別基準とする研究も進んでいるとの報道もありますが、今の処は本人の訴えから抽出した症状を所定基準の9項目に当てはめ、5項目以上に該当するか否かで是非を判別しているのが現状です。

 

2.医師の事務負担の増大(カルテの電子化)=画面情報の確認、入力などの事務作業に追われる余り、問診や患者との交信等、本筋の医療行為が脇に置かれ勝ちなのが実状。現場負担の増大は、結果として多忙を極める医師との情報共有の場を持ち難くさせ、連携を更に困難にしてしまいます。

 

(解説2)
3.精神障害労災認定基準の簡便化・ハードルの引き下げ(解説3)

 

4.対精神医療保険点数配分の矛盾点=患者一人当たりの診療時間は必然的に長くならざるを得ず、5分、30分、1時間の刻みで点数配分する現在の保険制度には、そもそもなじまない分野であるにも関わらず、同じモノサシがあてがわれているという矛盾した状態に置かれています。

 

5.産業医における精神疾患専門家の絶対的不足=シンポジウムの受講者に相当数の産業医(主に内科医か)が参加しているのが何よりの証拠ではないでしょうか。

 

別紙解説レポートをご覧になれば、お判り戴けるかと思いますが、小規模な事業者が独自に精神障害専門医と接触し、情報交換を行い、連携を進める等、実際には現実離れした話であり、個々の企業努力でカバーしきれる問題ではありません

 

また、個別に、契約相手の産業医を頼っても、適正な判断が得られるという保証がある訳でもありません
然りながら、医師側からの、交流の場を設けても良い−という折角の申し出を、無視し或いは断る理由も又ない筈です。

 

こうした状況を踏まえたとき、私達も、そろそろ商工会議所等、地域産業の中核となる組織を介した専門医若しくは専門医グループとの交渉や、定期的な情報交換又は確認の場を作るべき時期を迎えているのではないか−そのような仕組み作りに足を一歩踏み出す時期に来ているのではないか−というのが筆者の偽らざる感想ですが、皆様いかがお考えでしょうか。

 

※前回のレポート掲載から若干日数が経過してしまいましたが、本記事は「SMGレポート1201−1」の後編となります。
前編と併せてお読みいただければ幸いです。

 

なお、本記事の解説レポートは、別稿となります。
ご要望があれば、その旨お知らせください。

 

有事のルール・本編
「医師との連携・情報交換に立ちふさがる課題‐」

 

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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