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「有事のルール」 その3

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有事のルール・番外編V 労務リスク=法務リスク=金融リスク!?

日常に潜む、融資引き上げやストップ等の金融リスクについては、何となく判るような気がします。

 

それでも、このような行為は、資金の出し手側にとっても、本当はリスキーな話ではないのか−そもそも金融機関の儲けは貸付による利子収入であるはず−それが何故、貸しはがしや貸し渋り等、自分で自分の首を絞める行為に走るのか−卵という利子を産むニワトリ(事業)の餌(資金)を取り上げるのか-正に元も子もない話ではないか-という素朴な疑問が拭い切れません。
というのも実際、この単純な疑問が、確かに的を射ているケースもあるからです。

 

今や、日本の産業の一翼を担うまでに成長したリチウム電池開発の、先駆けとなった事で知られるE社の事例を見るだけでも、餌を出し渋って大きな卵を入手し損なった融資判断のミスが、鮮明に浮かび上がって参ります。

 

そこにはリレバンといいながら、事業者の潜在能力や事業の将来性を見極める識別能力が、必ずしも銀行側に備わっているとは言い難い現実が見て取れると同時に、バブル崩壊による大量の不良債権処理に苦しみ、その後の金融再編で吸収合併や国有化の憂き目に遭った各行が「一層羹に懲りて膾を吹くようになった」という事情が伺えます。
とは云え、目の前の卵をとり損ねてでも資金の回収に走るからには、それなりの成算がなければなりません。果たして、その成算とは何なのか?

 

それには次のような仕組みが働いているようです。この不況下、資金繰りに苦しむ事業者が増える中、日銀は、十分なカネを市場に供給していると強調しますが、正確には市中金融機関に供給しているに過ぎず、そのカネは市場には回って来ません。

 

事業資金の健全な貸出先が少ない-というのも理由の一つではあるでしょうが、消化し切れなかった資金は、結局、大半が国債買い入れに回されています。
利回り(現在1%割れ)だけを見れば、決して魅力的な商品とはいえない国債を、金融機関は何故こぞって買うのか−その背景にある理由こそが、金融リスクの根源に繋がるもう一つの側面を映し出しています。

 

金融機関は、債務者区分(貸出先の良・不良の格付け)について金融庁から厳しく監督指導を受けており、甘い格付け(民間ならば、売掛先の与信設定に問題があったとき)は直ちに見直しをしなければなりません。貸出先の格付け引下げが行われると、貸倒れ引当金の積増しが必要となり、結果、自己資本比率の低下を招くことになりますが、これは、欧州債務危機の影響もあって、益々ハードルが引き上げられつつある自己資本比率の「国際基準値から遠ざかる」ことを意味し、基準値が維持できない銀行は合併の対象にもなりかねないだけに、各行にとっては大問題なのです。

 

そこで登場するのが「不良資産への算入不要な国債」計算上の分母となる貸出債権から控除できる為、「自己資本比率が自動的にアップする国債」という筋書きなのです。

 

ボーダーレスで繋がった世界経済の要請とは云いながら、この歪んだ仕組みがマクロの金融リスクを産み、それがミクロにも波及する構図、と言えば良いでしょうか。
もしそうであるなら、事業者としては当面「リスクの連鎖を断ち切る」以外、途はありません。
次稿では、その方法の一端でも御紹介出来ればと考えています。

 

「有事のルール・番外編V」

労務リスク=法務リスク=金融リスク!?

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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